第34回学習会報告

保育行政と子育て支援の現状と課題ー名古屋の取り組みを中心にー   令和3年3月7日(日)10:00~12:00

   講師:近藤正春氏(桜花大学・名古屋短期大学名誉教授) 柄澤克彦氏(名古屋市子ども青少年局保育部長) 

 「保育行政と子育て支援の現状と課題」という大きなテーマで行われた学習会。主に 2020 年からの5か年計画「なごや 子ども子育てわくわくプラン 2024」の計画に沿ってのお話でした。近藤氏からは保育行政の問題、教育・保育・子育て支援 の課題を中心にお話していただき、柄澤氏からは、就学前児童の保育所等の現況・利用児童数・待機児童数とそれに関わ る保育関係予算について数的量的実数をもとにお話ししていただきました。 まず、保育行政は、未だに、就学前の子どもの教育と保育は統合されておらず、名古屋市の場合は、公立幼稚園は教育 委員会部局、それ以外の保育施設は市長部局の子ども青少年部局に分化し、私立幼稚園は都道府県知事の所管であり、 市の統一的な権限の下に置かれていない。現状は、分化した教育・保育、子育て支援の全市的な取り組みの総合的な計 画策と実施を連絡・調整のため、なごや子ども子育て支援協議会が置かれているが、子ども青少年局が主管部局となり教 育委員会との連絡調整を図る体制でゆるやかな組織となっている。 「なごや子ども子育てわくわくプラン 2024」計画の基本的視点。 ①子どもの最善の利益を重視し、権利を保障する視点 ②当事者参画の視点 ③さまざまな困難の予防、早期発見・早期対応の視点と、一人ひとりの発達に応じた 支援の視点 ④支援を必要とする対象につながるための情報提供やアウトリーチの視点 ⑤名古屋市の資源や相談・支援ネットワークの活用・充実をはかる視点 加えて、持続可能な開発目標(SDGs)の理念に基づき、各施策・事業を進めるとされている。 現状から見えてくる主な課題として・・・ (1)子どもの権利保障 子どもの権利を守り活かすことに対しての意識や文化を醸成し、社会全体に広く浸透させていくことが重要。なごや子どもの 権利条約の認知度が低い状況にあることから、条例の趣旨を子どもにも大人にも広く周知していく必要性。 (2)子どもの健やかな育ち 安心して出産や子育てができる保健・医療サービスの充実が求められており、妊娠期からの切れ目のない支援が受けられ るよう環境を整えること。すべての子どもが気軽に安心して学習や活動などを行える居場所、仕事と子育てを両立支援する ため、就労家庭の子どもの遊びや生活の場の確保。 (3)子育ての不安感、負担感 子育てに関する不安感、負担感は依然として大きく、その軽減に向けた支援の充実、地域のネットワークを強化し、必要と する情報の提供や適切な機関へつないでいくことの重要性。 (4)乳幼児期の教育・保育の量と質 保護者の就労希望数を十分考慮しながら、待機児童対策をすすめていく必要性。保育ニーズに合わせ、休日保育や延 長保育、病児・病後児デイケア事業など、さまざまな保育サービスを充実させていくことの必要性。 ★その他、社会的生活を円滑に送る上で困難を有する若者への支援。児童虐待の予防の観点から、保健センターはじめ、 地域の子育て支援機関等が連携し、妊娠期からの切れ目のない養育の支援に取り組むこと。子どもの貧困を社会全体で受 け止め、子どもがいかなる環境にもかかわらず、健やかに育っていけるよう、子どものライフステージに応じて切れ目なく包括 的に支援を行う必要性がある。 幼児教育の無償化の下での幼稚園と保育所等の連携・調整、教育・保育施設機能の各種別間の相対化が進む中での、 幼保の関係、公私の関係を含めて検討する段階にある。特に、教育・保育の質の向上の取り組みをどのように進めるのか、 先送りできない課題。子ども子育て支援事業計画においても、量的確保策の計画は明示されているが、質の確保・向上策 は具体性に欠けているのが現状。 最後にまとめとして、「なごや子ども子育てわくわくプラン 2024」で課題となっている、各分野における時間や場を越えた切 れ目のない誰一人置き去りにしない支援を実現するために果たす NPO の役割を投げかけられ終了しました。(文責 岩根 )