今、改めて考えたい「子どもの権利」と大人の役割
日時:令和5年5月21日(日)15:00~16:30
講師:間宮静香 弁護士(日本弁護士連合会子どもの権利委員会副委員長、子どもサポート弁護団、一般社団法人日本多胎支援協会顧問)
○ 子どもたちの置かれた状況 子どもたちの生きづらさを作る社会構造
児童虐待相談対応件数は、20万7659件(令和3年度)。一時保護した児童数は平成20年度から10年で 1.8 倍に増えています。これまでの社会は大人が生きやすい社会であり、障がい者と同様に子どもの声は聴かれない構造で子どもにとっては苦しい社会です。大人の意見中心型社会から子どもの権利基盤型社会への変革、大人の変容が必要です。
○ 子どもの権利を守る動き「子どもを同じ『人』として尊重しているか?」
「子どものくせに」「子どもみたい」「○○してあげる/○○してあげたい」という言葉を使っていませんか?子どもの権利条約の父 ヤヌシュ・コルチャック は以下のように述べています。
「子どもはだんだん人間になるのではなくすでに人間である。大人の思考は先を考えすぎるが、子どもは今日という日を生きている。世の中にはおそろしいことがたくさんある。しかし、最悪なのは子どもが親や教師を怖がることである。」
子どもは大人の自己実現の道具ではなく、別の考えを持つ別の人間です。子どもは独立した人格と尊厳を有する主体であり、大人の役割は、子どもの権利の実現を支援することです。
○ 子ども権利条約 4 つの一般原則
差別の禁止(子どもの権利条約2条)
子どもの最善の利益の保証(子どもの権利条約3条)
生きる権利(子どもの権利条約6条)
子どもの意見表明権(子どもの権利条約12条)
子どもの意見表明権では、子どもが相談できる環境が保障されています。しかし、子どもが気持ちや意見を言わない場合もあります。その理由には、「大人が忙しそう」「言っても変わらない」ということが挙げられます。話を聴く機会を意識的に確保し、安心して話ができる環境を準備しましょう。まずは、子どもの気持ちを受け止め頭ごなしに否定はしないで、少しでも気持ちを反映させる方法を探ることが大切です。大人の考える「子どもにいいこと」と「子どもの最善の利益」は必ずしもイコールにはなりません。
○ 「大人の意見中心型社会」から「子どもの権利基盤社会」へ!
子どもを一人の人として尊重できているでしょうか?「子ども差別」の中で子ども時代を過ごしてきた大人たちには大きな壁となっています。「○○すべき(例:学校は行くべき)」「大人の勝手な理想(例:明るい子がいい)」などからの脱却が必要です。子どもにだけ「子どもだから」という理由で制限を課していませんか?子どもに求めるのであれば、まずは、自分にできているか見つめ直してみましょう。子どもの権利基盤社会への変革の時です。 (文責:岩根)